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【2025年最新】綱島イトーヨーカドー跡地はどうなる?野村不動産の計画と駅周辺再開発の全貌を徹底解説

閉店したイトーヨーカドー綱島店の外観。 閉店・跡地はどうなる?
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横浜市港北区、特に綱島・日吉エリアは今、過去半世紀で最大級の「構造的転換点(Structural Inflection Point)」を迎えている。かつて東急東横線沿線の典型的なベッドタウンとして機能してきたこの街は、2023年の相鉄・東急直通線(新横浜線)の開業をトリガーに、東京都心・横浜中心部・新幹線ハブ(新横浜)をトライアングルで結ぶ「首都圏戦略拠点」へと変貌を遂げつつある。

本レポートは、ビジネスパーソンや不動産投資家、そして地域経済の変革と資産価値の行方に関心を持つ方々を対象に、2025年以降の綱島エリアの資産価値とビジネス機会を徹底的に分析するものである。特に、地域経済のアンカーであった「イトーヨーカドー綱島店」の閉鎖と、その跡地における野村不動産主導の大規模再開発計画、そして先行する「新綱島駅」周辺開発のシナジー効果について、マクロ経済データとミクロな現場情報を交えて詳解する。

結論から述べれば、綱島エリアは「昭和型の商業集積」から「令和型の多機能複合都市(Mixed-Use Compact City)」への脱皮を図っており、その過程で発生する「歪み」と「ギャップ」にこそ、極めて高いビジネスチャンスと投資妙味が潜んでいる。GMS(総合スーパー)の撤退は衰退ではなく、低未利用地の「資産流動化」であり、そこに高層レジデンスと体験型リテール(ロピア等)が組み込まれることで、土地の生産性は劇的に向上する見通しである。

  1. マクロ環境分析—「新横浜線経済圏」の勃興と人口動態の地殻変動
    1. インフラがもたらす「時間距離」の圧縮と資産価値への波及
    2. 「東京からの脱出」—人口動態に見る港北区の特異性
  2. アンカー・プロジェクト—「新綱島駅」周辺再開発の全貌
    1. プロジェクトの全体像と「新綱島スクエア」の戦略的意義
    2. 市場の審判—「ドレッセタワー新綱島」即完売の衝撃
    3. シニアレジデンスの併設と「多世代循環」モデル
  3. 焦点—イトーヨーカドー綱島店跡地開発と野村不動産の野望
    1. GMS閉鎖の経済合理的背景—「衰退」ではなく「資産転換」
    2. 野村不動産の「プラウドシティ」戦略とドミナント形成
    3. 「ロピア」進出説の蓋然性とリテール市場への衝撃
  4. イノベーションエンジン—Tsunashima SSTが創出する「見えない資産」
    1. スマートシティとしてのブランド・プレミアム
    2. 産官学連携による「知の集積」
  5. 市場データ分析—地価・賃料・利回りから見る「買い」のタイミング
    1. 2025年地価公示に見る「綱島バブル」の到来
    2. 賃貸市場の逼迫と利回り(ROI)の構造変化
    3. 「武蔵小杉疲れ」と綱島への回帰
  6. リテール・エコシステムの深層—「ビオセボン」の敗北と「商店街」の復権
    1. なぜ「ビオセボン」は撤退し、「ロピア」が待望されるのか
    2. レトロ商店街が持つ「真正性(Authenticity)」の価値
  7. 投資・ビジネス戦略—2025年以降の「勝ち筋」
    1. 不動産投資家のためのアクションプラン
    2. 事業者(リテール・サービス)のための戦略
    3. リスク要因の想定(ダウンサイド・リスク)
  8. 結論:2030年の綱島「Hiyoshi」を超える日

マクロ環境分析—「新横浜線経済圏」の勃興と人口動態の地殻変動

閉店したイトーヨーカドー綱島店の外観。
Google earth

インフラがもたらす「時間距離」の圧縮と資産価値への波及

不動産価値の根源は「移動コストの低減」にある。2023年3月の相鉄・東急直通線(東急新横浜線)の開業は、綱島のポジショニングを根本から書き換えた。従来、渋谷・横浜への「縦のライン」に依存していた交通体系に、新横浜(新幹線)・二俣川(相鉄線)・そして将来的には目黒・南北線方面への「放射状ネットワーク」が加わったのである。

これにより、綱島エリアは以下の3つの「アクセス優位性」を獲得した。

  1. グローバル・ゲートウェイへの直結: 新横浜駅への直通アクセスにより、東海・関西方面への出張ニーズを持つビジネス層の取り込みに成功した。
  2. 都心通勤圏の拡張: 目黒線・副都心線・三田線・南北線との相互直通運転により、大手町や六本木一丁目といったビジネス中枢へ乗り換えなしでアクセス可能となった。
  3. 将来的な羽田アクセスの可能性: 現在構想が進む「新空港線(蒲蒲線)」計画  が実現すれば、東急多摩川線を経由して羽田空港へのアクセス性が飛躍的に向上する可能性がある。これは、綱島が「陸(新幹線)」と「空(空港)」の双方に近い稀有な住宅地となることを示唆している。   

「東京からの脱出」—人口動態に見る港北区の特異性

日本の総人口が減少局面に突入する中、横浜市港北区は「人口増加の特異点」であり続けている。2024年のデータによれば、港北区の人口は36万5,000人を突破した 。この数字の背景にあるのは、単なる自然増ではない。東京都内、特に世田谷区、大田区、目黒区からの「転入超過」である。   

表1:港北区への転入超過要因分析

転出元エリア転入者層の属性転入の動機(推察)
世田谷区・目黒区30代-40代パワーカップル資産価格の高騰による「広さ」の追求、教育環境(慶應義塾等)への期待
大田区・品川区シングル・DINKS新横浜線開業による通勤利便性の向上、割安感(Arbitrage)の享受
地方都市大学生・若年社会人東横線ブランドへの憧れ、都心へのアクセスの良さ

分析:hiyosi.net<2024年>港北区の人口が36万5000人突破、コロナと再開発で都内から転入増 | 横浜日吉新聞新しいウィンドウで開くの人口動態データより筆者作成   

この「都落ち」ではなく「戦略的転居」とも呼ぶべき層の流入は、地域の所得水準を押し上げ、結果として消費構造の高度化を促している。彼らは「安さ」よりも「タイムパフォーマンス(タイパ)」や「ウェルビーイング」を重視する傾向があり、これが後述する「イトーヨーカドー跡地」や「新綱島スクエア」に求められる商業機能の質を決定づけている。


アンカー・プロジェクト—「新綱島駅」周辺再開発の全貌

プロジェクトの全体像と「新綱島スクエア」の戦略的意義

綱島の再生は、東急グループが主導する「新綱島駅前地区第一種市街地再開発事業」によって幕を開けた。このプロジェクトの中核施設である「新綱島スクエア」は、単なる駅ビルではない。地下で新駅(新綱島駅)に直結し、地上には商業施設、公益施設(横浜市港北区民文化センター)、そして高層レジデンス(ドレッセタワー新綱島)を積層させた「垂直都市(Vertical City)」である 。   

施設構成の戦略性:

  • 低層部(商業・公益): 「心の広場」をコンセプトに掲げ、地域住民の滞留時間を最大化する仕掛けが施されている。特筆すべきは区民文化センターの入居であり、これにより「文化・芸術」というソフトパワーが集客装置として機能する。これは行政との連携(PPP: Public-Private Partnership)による資産価値安定化の定石である。
  • 高層部(住居): 「ドレッセタワー新綱島」は、綱島エリア初の駅直結タワーマンションとして供給された。

市場の審判—「ドレッセタワー新綱島」即完売の衝撃

不動産市場において、そのエリアのポテンシャルを測る最も正確な指標は「販売スピード」である。「ドレッセタワー新綱島」は2021年8月の販売開始からわずか10ヶ月、2022年9月には全179戸を契約完売するという驚異的なセールスを記録した 。   

表2:ドレッセタワー新綱島の販売データ分析

項目データインサイト(分析)
坪単価約400万円従来の綱島相場(250-300万円台)を大きく上回る価格設定でも需要が吸収されたことを証明。
販売期間約10ヶ月武蔵小杉や横浜駅周辺のタワーマンションに匹敵する流動性の高さ。
購入者層広域集客地元需要だけでなく、広域からの投資・実需マネーが流入した証左。

データ出典: rbayakyu.jp分譲開始から10か月で全179戸完売 東急「ドレッセタワー新綱島」bluestyle.livedoor.biz高さ約100m「ドレッセタワー新綱島」の建設状況!全戸完売しています(2022.10.27)

この「即完売」の事実は、綱島において「1億円の壁(億ション)」が心理的障壁ではなくなったことを意味する。野村不動産によるイトーヨーカドー跡地開発においても、この価格帯が「フロア(下限)」として意識されることになるだろう。

シニアレジデンスの併設と「多世代循環」モデル

新綱島駅直結の開発において見逃せないのが、東急不動産によるシニア向け住宅「グランクレール綱島」の開業(2023年11月)である 。 この施設は、聖マリアンナ医科大学との連携や順天堂大学監修のプログラムを導入しており、単なる高齢者住宅ではなく「ヘルスケア・イノベーション拠点」としての側面を持つ。   

  • ビジネス視点: 資産を持つ富裕層シニアを駅直結エリアに呼び込むことで、彼らが所有していた郊外の一戸建て住宅が中古市場に流通し、そこに若いファミリー層が入居するという「住宅ストックの循環」を促進する。これは街全体の若返りを図る上で極めて合理的な都市戦略である。

焦点—イトーヨーカドー綱島店跡地開発と野村不動産の野望

GMS閉鎖の経済合理的背景—「衰退」ではなく「資産転換」

2024年から2025年にかけて、全国でイトーヨーカドーの閉店が相次いでいる。これは小売業の敗北と報じられがちだが、不動産ビジネスの視点では「REIT(不動産投資信託)的な資産の組み換え」である。 かつて駅前の一等地に広大な平面駐車場とともに建設されたGMSは、EC(電子商取引)の台頭により、その容積率に対する収益性が著しく低下している。一方で、地価は上昇を続けている。

事例比較:川崎港町店のケース イトーヨーカドー川崎港町店跡地では、「(仮称)鈴木町駅前南地区開発計画」として、地上26階建て・高さ90mのタワーマンション建設が進んでいる(2026年1月着工予定) 。 この事例は、綱島店の未来を占う上での最良の先行指標である。すなわち、綱島店跡地もまた、商業施設単体での建て替えではなく、「高層レジデンス + 足元商業」の複合開発となる確率は極めて高い。   

野村不動産の「プラウドシティ」戦略とドミナント形成

綱島イトーヨーカドー跡地開発の主役は野村不動産である。同社は近隣の日吉エリアにおいて「プラウドシティ日吉」という大規模再開発を成功させており、港北区内でのブランド力は絶大である。

野村不動産のドミナント(地域支配)戦略:

  1. プラウドシティ日吉: 箕輪町における大規模面開発。
  2. Tsunashima SST: パナソニックとの協業によるスマートシティ運営。
  3. SoCoLa(ソコラ): 地域密着型商業施設の展開(日吉、武蔵小金井等) 。   

これらの実績から予測される綱島跡地の開発コンセプトは、「多機能・高付加価値型のコンパクトシティ」である。具体的には、低層階(1F-3F程度)に「SoCoLa」ブランド、もしくはそれに準ずる商業モールを配置し、中高層階に「プラウドタワー」あるいは「プラウドシティ」ブランドのハイグレードマンションを建設する公算が大きい。

「ロピア」進出説の蓋然性とリテール市場への衝撃

ユーザーの関心が高い「ロピア」の進出可能性について分析する。ロピアは「日本版コストコ」とも称される神奈川発祥のスーパーであり、近年、居抜き物件や大規模再開発の核テナントとして猛烈な勢いで出店している(例:多摩境店 2025年11月開店予定 )。   

なぜロピアなのか?(Why Lopia?)

  • ターゲットの整合性: 綱島に流入する30-40代の子育て世帯は、食費に対するコスト意識と品質へのこだわりを両立させている。現金決済のみで徹底的な低価格と高品質(特に精肉)を実現するロピアのモデルは、この層に強く刺さる。
  • 集客力: 後述する「ビオセボン」のような高価格帯ニッチスーパーとは異なり、ロピアは広域から車や自転車で客を呼べる「目的来店型」のテナントである。商業施設のアンカーとして、野村不動産にとっても魅力的な選択肢となる。

競合環境の分析: 周辺には「アピタテラス横浜綱島(ユニー系)」や「イオン」が存在する 。ここにロピアが参入すれば、価格競争は激化するが、同時に綱島エリア全体の「買い物利便性」が向上し、商圏人口はさらに拡大する。ロピアの「エンターテインメント性(量り売りや試食、活気)」は、Amazon Freshなどのネットスーパーが提供できない「体験価値」を提供するため、リアル店舗としての生存能力が高い。   


イノベーションエンジン—Tsunashima SSTが創出する「見えない資産」

スマートシティとしてのブランド・プレミアム

綱島エリアの資産価値を語る上で、パナソニックの工場跡地を活用した次世代スマートタウン「Tsunashima SST(サスティナブル・スマートタウン)」の存在は無視できない 。これは単なる住宅地ではなく、未来の都市生活の実証実験場である。   

Tsunashima SSTが提供する6つのスマートサービス :   

  1. エネルギー: 太陽光発電と蓄電池の連携によるエネルギーの地産地消と災害時のレジリエンス確保。
  2. セキュリティ: 街全体を見守るタウンカメラと警備システムによる「バーチャル・ゲーテッド・タウン」。
  3. モビリティ: シェアサイクルやカーシェア、将来的には自動運転バスの実証実験。
  4. ウェルネス: 慶應義塾大学と連携した健康管理プログラム。
  5. コミュニティ: 住民専用ポータルを通じた交流促進。
  6. ファシリティ: センサーを活用した最適制御。

不動産投資の観点から見ると、SSTの存在は「ESG投資」の文脈で評価される。環境性能や防災性能が高い街区は、将来的に資産価値が減価しにくい「ブルーチップ(優良資産)」と見なされるからである。

産官学連携による「知の集積」

Tsunashima SSTには、慶應義塾大学の国際学生寮や、米Apple社の研究開発施設(YTC)が隣接・入居している。これにより、綱島は「ベッドタウン」から「イノベーション・ディストリクト(創造地区)」へと性格を変えつつある。 2025年以降も、横浜市や慶應大学との連携プロジェクトが継続される予定であり 、例えば「子ども防災フェア」や脱炭素イベントなど、住民参加型のプログラムが地域の社会的資本(ソーシャル・キャピタル)を醸成している。この「ソフトの強さ」こそが、他の無機質なタワーマンション街との決定的な差別化要因となる。   


市場データ分析—地価・賃料・利回りから見る「買い」のタイミング

2025年地価公示に見る「綱島バブル」の到来

2025年の基準地価データは、綱島エリアにおける「地価のスーパーサイクル」の到来を告げている。

表3:2025年 港北区主要地点の地価上昇率(前年比)

地点名用途上昇率特記事項
綱島西3丁目住宅地+8.9% (推計)県内有数の上昇率。イトーヨーカドー再開発の期待値を織り込み開始。
綱島西5・6丁目住宅地+7%台駅からの波及効果。新橋(橋梁)開通による利便性向上が寄与。
日吉3丁目住宅地+3.0%強慶應大学裏手の高級住宅街。安定上昇だが上昇幅は綱島が圧倒。

データ出典:hiyosi.net2025基準地価>綱島西3・5・6丁目の宅地で高い上昇率、日吉3や大曽根2が続くhiyosi.net2025基準地価>綱島西3・5・6丁目の宅地で高い上昇率、日吉3や大曽根2が続くの記述を基に構成   

特筆すべきは、「綱島西3丁目」の突出した上昇率である。ここはまさにイトーヨーカドーやパデュ通りに近接するエリアであり、投資マネーが「再開発の恩恵を最も受ける場所」を正確に嗅ぎつけていることを示している。一方、バス圏である新吉田東エリアでも上昇が見られる  ことから、駅前の高騰に耐えられなくなった需要が周辺部へ染み出す「スピルオーバー効果」が発生している。   

賃貸市場の逼迫と利回り(ROI)の構造変化

地価の高騰に対し、賃料の上昇は遅行する傾向があるが、綱島ではそのラグが短縮している。

  • 平均利回り: 綱島駅周辺の賃貸マンションの平均利回りは4.13% 。   
  • インサイト: 表面利回り4%台は、都心3区(港・千代田・中央)並みの低水準(=高価格)に近づきつつある。これは、投資家が「インカムゲイン(家賃収入)」以上に「キャピタルゲイン(売却益)」を期待していることの裏返しである。

賃料上昇のドライバー:

  1. 供給不足: 大規模開発以外の個別案件では、用地取得難から新規の賃貸マンション供給が限定的。
  2. 法人需要: 新横浜線開通により、新横浜や都心企業に通う社員の借上げ社宅ニーズが増加。

「武蔵小杉疲れ」と綱島への回帰

興味深い定性データとして「武蔵小杉への疲れ」という声がある 。 「ごちゃごちゃしていて狭い敷地にタワマンが建ち、駅もホームも人が溢れかえっている」という武蔵小杉の現状に対し、綱島はまだ「人間的なスケール(Human Scale)」を保っている。鶴見川の自然環境や、後述する商店街のレトロな雰囲気が、「程よい都会」を求める層にとっての避難所(サンクチュアリ)として機能している。この心理的要因は、綱島の住宅需要を下支えする強力なファンダメンタルズである。   


リテール・エコシステムの深層—「ビオセボン」の敗北と「商店街」の復権

なぜ「ビオセボン」は撤退し、「ロピア」が待望されるのか

プラウドシティ日吉内の「ソコラ日吉」に入居していたオーガニックスーパー「ビオセボン」が、開店からわずか3年で撤退した事実  は、この地域のマーケティングを考える上で極めて重要な教訓を含んでいる。   

  • 失敗の要因: 港北区の住民は富裕であっても、その消費性向は「実利主義(Pragmatic)」である。日常の食材に過度なプレミアム価格を支払うことにはシビアだ。また、車社会でもあるため、中途半端な品揃えの高級スーパーよりも、遠くても大量に安く買える店を選ぶ。
  • ロピアの勝算: 前述の通り、ロピアはこの「実利主義」に合致する。イトーヨーカドー跡地にロピアが入れば、それは「ビオセボンの二の舞」にはならず、むしろ周辺の商店街やアピタと共存しながら、エリア全体の集客力を底上げする起爆剤となるだろう。

レトロ商店街が持つ「真正性(Authenticity)」の価値

再開発が進む一方で、綱島駅西口に広がる商店街(綱島商店街・パデュ通り周辺)は、昭和30年代の面影を残す貴重な資産である 。   

  • 約160の店舗がひしめき合い、路地が網の目のように走る。
  • フラミンゴシクリッド(熱帯魚)を飼育する鮮魚店「柿﨑水魚店」のような、チェーン店にはない個性的な「名物店」が存在する。
  • 「空きテナント数ゼロ(2011年時点)」という驚異的な稼働率を誇り、新陳代謝を繰り返しながらも活気を維持している。

ビジネス・インサイト: 都市計画のトレンドにおいて、全てが新品のピカピカな街(ジェントリフィケーションの完成形)は、逆に「退屈」とみなされ始めている。Tsunashima SSTのような「超・近未来的エリア」と、西口商店街のような「超・レトロエリア」が徒歩圏内に混在する「カオス(混沌)」こそが、クリエイティブ・クラス(創造的階級)を惹きつける磁力となる。 飲食店経営者にとって、狙い目は再開発ビルの中ではなく、この商店街の「古民家リノベーション」物件である。再開発ビルの完成により流入する数千人の新規住民は、チェーン店ではない「本物の体験」を求めて、路地裏へと繰り出すからだ。


投資・ビジネス戦略—2025年以降の「勝ち筋」

不動産投資家のためのアクションプラン

資産形成に関心のある読者に向けて、具体的な投資スタンスを提言する。

1. 買い推奨ゾーン:「築古×駅近」 新綱島スクエアやイトーヨーカドー跡地のタワーマンションは、坪単価400万〜500万円超えの「チャレンジ価格」になる可能性が高い。これに引きずられる形で、駅徒歩7分以内の築20年〜30年のマンションの資産価値が見直される。これらは現在の相場では割安に放置されているケースがあり、リノベーション前提での取得は高いキャピタルゲイン(またはインカムゲイン)を生む可能性がある。

2. 売り推奨ゾーン:「バス便×旧耐震」 地価上昇が波及しているとはいえ、駅からバスを利用するエリア(特に新吉田の奥地など)の将来性は、駅前一極集中のトレンドと比較して不透明だ。もし相続等で保有しているなら、現在の「綱島ブーム」の熱気が冷めないうちに、デベロッパーや建売業者への売却(利益確定)を検討すべきタイミングである。

事業者(リテール・サービス)のための戦略

新たに綱島でビジネスを始めるなら、「タイムパフォーマンス」と「体験」の二極化に対応すべきだ。

  • 狙い目業種:
    • 教育産業(塾・習い事): 流入するパワーカップルは教育熱心だが、忙しい。駅前タワー周辺での「預かり機能付き学習塾」や「送迎付きアフタースクール」は鉄板の需要がある。
    • パーソナルウェルネス: 24時間ジムは飽和気味だが、単価の高い「ピラティス」「パーソナルトレーニング」は、SSTの健康意識の高い住民層と親和性が高い。
    • 高単価テイクアウト: ロピアで食材を買う日もあれば、忙しくて料理できない日もある。デパ地下レベルの惣菜店や、こだわりのベーカリーは、商店街の中にありながらも高単価を維持できる。

リスク要因の想定(ダウンサイド・リスク)

バラ色の未来だけでなく、リスクも直視する必要がある。

  • 水害リスク: 綱島は鶴見川の氾濫原に位置する。ハザードマップ上のリスクは依然としてあり、これが資産価値の上値を抑える要因になり得る。ただし、近年の開発(SST等)は嵩上げや貯留施設の整備を徹底しており、物理的なリスクは低減されている。
  • 建築コストの高騰: 2025年問題(建設業の労働力不足)により、イトーヨーカドー跡地の建設費が想定以上に膨らむ可能性がある。これが販売価格に転嫁されすぎると、市場がついてこられず、販売が長期化する(=街の完成が遅れる)リスクがある。

結論:2030年の綱島「Hiyoshi」を超える日

2030年、綱島イトーヨーカドー跡地の再開発が完了し、新綱島駅周辺の街区が成熟した時、綱島はもはや「日吉の隣町」ではなくなるだろう。 慶應義塾大学という強力なブランドを持つ日吉が「静的な高級住宅地」であるのに対し、綱島は新幹線・地下鉄・未来技術(SST)・レトロ文化が交錯する「動的なハブ都市」として独自の地位を確立する。

野村不動産の計画は、単に古いスーパーをマンションに変えることではない。それは、綱島という街のOS(オペレーティングシステム)を、昭和の「大量消費型」から令和の「持続可能・循環型」へとアップデートする壮大なプロジェクトである。 ビジネスパーソンにとって、この変化は単なる観察対象ではない。変革の波に乗るか、傍観するか。その意思決定の期限は、地価が完全に織り込まれる前の「今」である。


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