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池袋アドアーズサンシャイン閉店 本当の理由 40年の歴史に幕を下ろすゲーセンの未来と「駅袋」から脱却する街の物語

「アドアーズサンシャイン店」外観/画像は店舗公式サイト 閉店・跡地はどうなる?
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はじめに:サンシャイン60通りから、おなじみの赤い看板が消える日ーー。サンシャイン60通りを歩けば、いつでもそこにあった光景。

まばゆいネオンと喧騒のなかで、ひときわ目を引く赤い看板。そこから漏れ聞こえてくるのは、音楽ゲームのビート、クレーンゲームが景品を掴み損ねたときのコミカルな効果音、そしてコインが投入されるチャリンという金属音。

学生たちの放課後の笑い声、仕事帰りのサラリーマンが一息つく姿。池袋の街を訪れたことがある人なら、誰もが一度は目にしたことがあるであろうゲームセンター「アドアーズサンシャイン店」。

その、あまりにも当たり前だった日常が、終わりを告げようとしています。2026年1月18日、40年という長きにわたる歴史に、静かに幕が下ろされることが発表されました。このニュースは多くの人々に衝撃と寂しさをもたらし、「また一つ、思い出の場所が消えてしまうのか」という感傷的なため息が、SNSのタイムラインを埋め尽くしました。

しかし、この閉店劇の裏には、単なる一つの店舗の営業終了という言葉だけでは片付けられない、もっと大きな物語が隠されています。

公式発表が語る「諸般の事情」とは、具体的に何を指すのでしょうか?本当にゲームセンターという文化は、時代の波に飲まれて消えゆく運命なのでしょうか?そして、この一つのゲームセンターの閉店が、巨大都市・池袋がこれから向かおうとしている未来を、どのように映し出しているのでしょうか?

この記事では、単なるニュースの追随にはとどまりません。「諸般の事情」の真相を徹底的に掘り下げ、アドアーズが刻んだ40年の思い出を振り返り、ゲームセンター業界が直面するリアルな現状をデータと共に分析します。

さらに、池袋で繰り広げられる熾烈な「ゲーセン戦国時代」の最新勢力図から、都市計画の専門家が語る「駅袋」というキーワードを軸に、池袋という街そのものが遂げようとしている壮大な変革までを解き明かしていきます。

これは、一つのゲームセンターへの追悼文であると同時に、変わりゆく都市と文化の未来を見つめるための、詳細なレポートです。


池袋アドアーズサンシャイン「諸般の事情」の裏側へようこそ

「アドアーズサンシャイン店」外観/画像は店舗公式サイト
「アドアーズサンシャイン店」外観/画像出典 店舗公式サイト

閉店のニュースに触れた多くの人が、まず最初に抱いた疑問。それは「なぜ?」というシンプルなものでしょう。公式サイトや多くのニュース記事では、その理由を「諸般の事情」という、いかにも日本企業らしい、丁寧でありながらも煙に巻くような言葉で説明しています 。

これでは、長年通い続けたファンたちの心は晴れません。「経営が悪化したのかな」「コロナの影響がまだ続いているのか」…そんな憶測が飛び交うのも無理はないでしょう。  

アドアーズサンシャイン公式発表の裏に隠された、本当の理由

しかし、もう少し深く情報を探ると、この「諸般の事情」の正体が見えてきます。SNS上では、閉店を知らせる現地の告知物を撮影した投稿などから、より具体的な理由が示されていました。それは「ビル建替え工事」という、非常に明確な物理的な理由です 。  

つまり、アドアーズサンシャイン店は、経営不振や客足の減少といった内的な要因で閉店するのではなく、入居しているビルそのものが次のステージへと移行するために、場所を明け渡さざるを得なくなった、というのが真相に近いのです。

これは、物語の第一幕にすぎません。本当の主役は、アドアーズの運営会社ではなく、このビルのオーナーにあります。

点と線が繋がる時:大家さん、講談社の壮大な計画

アドアーズサンシャイン店が入居しているビルは、ただの雑居ビルではありません。この建物は、かつて映画館「シネマサンシャイン池袋」として親しまれ、その後、出版業界の巨人である講談社が主体となって運営するLIVEエンターテインメントビル「Mixalive TOKYO(ミクサライブ東京)」として生まれ変わった、池袋のカルチャーシーンを象徴する施設なのです 。アドアーズは、このビルの1階から3階を借りる店子(テナント)という立場でした 。  

そして、ここで決定的な情報が浮上します。Mixalive TOKYOの公式サイトには、重要な告知が掲載されています。それは、講談社のLIVEエンターテインメント事業が2025年をもって「ラストイヤー」を迎え、2026年から新たな「2nd Stage」へとステップアップするという内容です 。  

ここで、パズルのピースがすべてはまります。

  1. アドアーズサンシャイン店の閉店予定日は、2026年1月18日
  2. Mixalive TOKYOが「2nd Stage」を開始するのは、2026年から。

閉店と新計画の開始時期が、見事に一致します。このことから導き出される結論は明らかです。アドアーズサンシャイン店の閉店は、アドアーズ単独の経営判断というよりも、ビルのオーナーである講談社が「Mixalive TOKYO」という施設全体を次のフェーズへ進化させるための、大規模な再開発計画の一環である、ということです。

これは、「ゲームセンターが一つなくなる」という単純な話ではありません。「日本の大手出版社が、一等地に持つエンターテインメントビルの未来戦略を大きく転換させ、その結果として、長年テナントとして入っていたゲームセンターが立ち退きを余儀なくされた」という、より複雑でダイナミックな経済活動の物語なのです。読者が知りたかった「本当の理由」は、ここにありました。


思い出のゲームは最強!アドアーズと過ごした40年

閉店の理由がわかったとしても、それで寂しさが消えるわけではありません。むしろ、40年という時間の重みが、ずっしりと心にのしかかってきます。アドアーズサンシャイン店は、単にゲームをプレイする場所ではありませんでした。それは、多くの人々の青春の一ページが刻まれた、かけがえのない「サードプレイス」だったのです。

サードプレイスとは、自宅(ファーストプレイス)でも、学校や職場(セカンドプレイス)でもない、自分らしくいられる第三の居場所のこと。

アドアーズは、まさにそんな存在でした。そこには、学校の帰りに友達と集まり、他愛もない話で笑い合った放課後の時間がありました。最新のゲームに胸をときめかせ、100円玉を握りしめて筐体の前に立った、あの高揚感がありました。

100円玉の向こうにあった夢:クレーンゲームの熱狂

アドアーズの入り口付近で、いつも多くの人を惹きつけていたのが、きらびやかな景品が並ぶクレーンゲーム(UFOキャッチャー)のコーナーでした。

どうしても欲しかったあのアニメキャラクターのぬいぐるみ、友人へのプレゼントにしようと躍起になったお菓子のタワー。何度100円玉を投入しても、アームが景品を掴んでは離す、あの絶妙なもどかしさ。一体、私たちは collectively、あのUFOキャッチャーの神々にどれだけの100円玉を捧げてきたのでしょうか 。  

しかし、ようやく景品がゴトンと落ちた瞬間の達成感は、何物にも代えがたいものでした。それは単なる「物」を手に入れた喜びではなく、自分の技術と運で「勝利」を掴み取った証だったのです。アドアーズ限定の缶バッジや景品は、多くのファンにとって宝物であり、その思い出は今もフリマアプリなどで取引されています 。  

拳と拳が語り合う場所:格闘ゲームの聖地として

少し奥に進むと、そこは真剣勝負の世界。レバーを握る音とボタンを叩く音が激しく響き渡る、格闘ゲームのエリアです。『ストリートファイター』、『鉄拳』、『ギルティギア』…。画面の中で繰り広げられるコンボの応酬は、プレイヤーたちのプライドをかけた対話でした。

アドアーズサンシャイン店は、数々の大会が開催されるなど、格闘ゲームコミュニティにとって重要な拠点の一つでした 。見知らぬ相手との対戦で腕を磨き、時には常連同士で攻略法を語り合う。

そこには、オンライン対戦にはない、顔の見えるコミュニティの熱がありました。隣のプレイヤーが繰り出す華麗なテクニックに感嘆し、自分の敗北に本気で悔しがる。そんな人間臭いドラマが、日々生まれていたのです。  

指先が奏でるシンフォニー:音楽ゲームの殿堂

そして、アドアーズのフロアを独特の雰囲気で満たしていたのが、音楽ゲームのエリアです。ヘッドフォンをつけ、一心不乱に画面と向き合うプレイヤーたち。彼らが『beatmania IIDX』の鍵盤を叩き、『CHUNITHM』のパネルを滑らせ、『DanceDanceRevolution』のステップを踏む姿は、まるでアスリートかコンダクターのようでした 。  

一時期はIIDXが撤去されるなど、ラインナップの変遷はありましたが、それでも多くの音ゲーマーにとって、アドアーズはハイスコアを目指すための修練の場であり、仲間と交流するサロンでした 。最新の楽曲に挑戦し、完璧なフルコンボを達成した時の快感は、プレイヤーだけが知る至福の瞬間です。  

このように、アドアーズサンシャイン店は、様々なジャンルのゲームを通じて、多様なコミュニティを育んできました。人々がそこで共有したのは、ゲームのスコアだけではありません。

喜び、悔しさ、興奮、そして仲間との繋がり。閉店のニュースがこれほどまでに多くの人々の心を揺さぶるのは、単に遊ぶ場所がなくなるからではなく、そうした感情や人間関係が結びついた「思い出の最強さ」が、失われようとしているからに他ならないのです 。  


ゲーセンは絶滅危惧種?業界のウソとホント

「またゲーセンが潰れたのか…もう終わりだな」。アドアーズのような大型店の閉店ニュースを聞くと、多くの人がそう感じてしまうかもしれません。

確かに、街角からゲームセンターが姿を消していったのは事実です。警察庁の統計によれば、ゲームセンターの店舗数は1985年の約2万6,000店をピークに、2021年には約3,900店と、6分の1以下にまで激減しています 。

この数字だけを見れば、「ゲームセンターは絶滅危惧種」という見方も、あながち間違いではないように思えます。  

しかし、物事の表面だけを見て判断するのは早計です。業界のデータを詳しく見ていくと、この「衰退論」とは少し違う、より複雑で興味深い実態が浮かび上がってきます。

店舗数は減少、でも市場規模は意外と元気?

日本アミューズメント産業協会(JAIA)の調査によると、驚くべきことに、ゲームセンター業界全体の市場規模(オペレーション売上高)は、店舗数が減少し続ける一方で、2015年度以降は増加傾向にありました 。コロナ禍で一時的に大きく落ち込んだものの、その後は回復を見せています 。  

これは一体、どういうことでしょうか?答えは、業界のビジネスモデルの転換にあります。かつてのような、薄暗い空間にビデオゲーム筐体がずらりと並ぶ小規模な店舗は淘汰されました。その代わりに、明るく広々とした空間に、クレーンゲームや大型の体感ゲーム、音楽ゲームなどを中心に据えた、ファミリー層やカップル、女性グループでも入りやすい「大型アミューズメント施設」が主流になったのです。

つまり、業界は「死につつある」のではなく、「選択と集中」によって、より収益性の高い形へと「進化」しているのです。店舗数は減ったものの、一店舗あたりの規模と売上は大きくなり、結果として市場規模を維持、あるいは成長させているというわけです。

アドアーズ閉店は経営不振ではない

この「業界進化論」を裏付けるのが、アドアーズの親会社である株式会社ワイドレジャーの経営状況です。同社は福岡を拠点とするアミューズメント業界の大手で、2018年に首都圏地盤のアドアーズを子会社化し、2022年には吸収合併しました 。  

その財務状況を見てみると、2023年2月期の売上高は278億円、営業利益は32億円と、非常に健全な経営を続けていることがわかります 。さらに、2025年2月期の売上高は283億円と予測されており、成長軌道にあると言えるでしょう 。2023年には「いちばん楽しい100円へ。」という新たなタグラインを掲げ、ブランドイメージの刷新も図っています 。  

もし会社全体が経営不振に陥っているのであれば、旗艦店の一つであるサンシャイン店の閉店も「事業縮小の一環」と説明できます。しかし、現実はその逆です。親会社は好調で、積極的に事業を展開しています。

この事実関係を整理すると、アドアーズサンシャイン店の閉店が、同店の業績不振やゲームセンター事業そのものの失敗によるものではないことが、より明確になります。これは、第1章で述べた通り、あくまでも「ビル再開発」という、店舗自身のパフォーマンスとは別の、外部要因による戦略的な閉店なのです。

読者が抱くかもしれない「ゲーセンはもうダメなのか」という漠然とした不安は、理解できるものです。

しかし、この一件をもって業界全体の未来を悲観するのは、少し違います。アドアーズサンシャイン店の閉店は、ゲームセンター業界の終焉を告げる鐘ではなく、むしろ、都心の一等地における不動産価値の高騰と、エンターテインメントのあり方をめぐる企業間競争の激しさという、現代の都市が抱える別の課題を象徴しているのです。


池袋ゲーセン戦国時代!次の遊び場はここだ

アドアーズサンシャイン店という巨星が一つ消えることで、池袋のゲームセンターシーンが終わるわけではありません。むしろ、その逆です。一つの大きなランドマークがなくなることで、残された強者たちの生存競争はさらに激化し、池袋は新たな「ゲーセン戦国時代」へと突入します。

悲しみに暮れるのは少しだけにして、顔を上げれば、池袋にはまだまだ魅力的な遊び場がたくさんあるのです。

アドアーズを失ったゲーマーたち、そしてこれから池袋で遊ぶ場所を探すあなたのために、現在の池袋を代表する「新・御三家」とも言うべき大手ゲームセンターの特徴を徹底比較し、次の遊び場を提案します。

GiGO(ギーゴ):トレンドと「推し活」の最前線

「Get into the Gaming Oasis(ゲームのオアシスに飛び込め!)」をコンセプトに、セガのゲームセンターから生まれ変わったのが「GiGO」です 。特に池袋では、総本店をはじめ複数の店舗を展開し、圧倒的な存在感を放っています。  

GiGOの最大の特徴は、現代の若者文化、特にアニメやゲームファン、「推し活」に励む人々のニーズを的確に捉えている点です。

  • 圧倒的なプライズとコラボ展開:店内には最新の人気キャラクターの景品が並ぶクレーンゲームがずらりと並び 、人気アニメやゲームとのコラボカフェや限定グッズ販売も頻繁に開催されます 。  
  • 「推し活」を全力サポート:池袋3号館には、推し活グッズ専門ショップ&カフェ「fanfancy+ in GiGO」や、カプセルトイ専門フロア「GORON!」、キャラクターとのコラボたい焼きを販売する「GiGOのたい焼き」など、ファンにはたまらない専門フロアが設けられています 。  
  • 明るく開放的な空間:かつてのゲームセンターのイメージを覆す、明るく入りやすい店内は、ゲームに詳しくない人でも気軽に立ち寄れる雰囲気作りが徹底されています 。  

GiGOは、もはや単なるゲームセンターではなく、キャラクターコンテンツを軸とした総合エンターテインメント空間へと進化しているのです。

タイトーステーション:最先端技術で未来の遊びを体験

ゲーム業界の老舗であるタイトーが運営する「タイトーステーション」は、伝統的なアーケードゲームの魅力を守りつつ、常に新しい技術を取り入れているのが特徴です。

  • VR/XRアトラクションの充実:池袋西口店には「X-STATION」という最先端のXR(クロスリアリティ)体験スペースがあり、家庭では味わえない没入感満点のゲームが楽しめます 。450度の映像空間に囲まれるアトラクションなど、ユニークな体験が売りです。  
  • 王道のラインナップ:もちろん、最新の音楽ゲームやビデオゲーム、メダルゲームの品揃えも豊富で、昔ながらのゲーマーも満足できるラインナップを誇ります 。  
  • 情報発信の拠点:店頭の大型ビジョンでゲームプレイ映像を生配信するなど、eスポーツ的な楽しみ方も提案しています 。  

タイトーステーションは、新しい刺激とテクノロジーに興味がある人にとって、未来の遊びをいち早く体験できる場所と言えるでしょう。

ラウンドワン:遊びのすべてがここにある総合エンターテインメント施設

「ラウンドワン」は、ゲームセンターという枠を超えた、まさに「遊びのデパート」です。

  • 多様なアトラクション:広大なフロアには、最新のゲーム機が並ぶアミューズメントコーナーはもちろん、ボウリング、カラオケ、ビリヤード、ダーツ、卓球といった多彩な施設が併設されています 。  
  • 長時間滞在が前提の料金体系:投げ放題やフリータイムといったお得なパック料金が充実しており、友人グループや家族で一日中、あるいは朝まで遊び明かすのに最適です 。  
  • 24時間営業の安心感:池袋という街の特性上、「終電を逃してしまった!」という時でも、始発まで安全に楽しく時間を過ごせる場所として、非常に重宝されています 。  

ラウンドワンは、特定のゲームが目的というよりは、「みんなで集まって何か楽しいことをしたい」というニーズに応える、総合的なレジャースポットとしての地位を確立しています。

一目でわかる!池袋主要ゲーセン比較表

これからの池袋での遊び場選びに役立つよう、各店舗の特徴を一覧表にまとめました。自分の目的や気分に合わせて、最高の「ゲームのオアシス」を見つけてください。

店舗名コンセプト・特徴こんな人におすすめ
GiGO総本店 & 各館最新プライズ景品、アニメ・ゲームコラボ、推し活専門フロア、体験型フードアニメやゲームのファン、最新トレンドを追いかけたい人、友達とワイワイ楽しみたい人
タイトーステーションVR/XRなどの最先端技術体験、定番の音楽ゲームやビデオゲームも充実新しい刺激やユニークな体験を求める人、テクノロジーに興味がある人
ラウンドワン総合エンターテインメント施設(ゲーム、ボウリング、カラオケ、ダーツ等)一つの場所で一日中遊びたいグループ、終電を逃した時の朝までの遊び場として

アドアーズサンシャイン店の閉店は確かに寂しいですが、池袋のゲーム文化の灯が消えたわけではありません。むしろ、各社が独自の戦略で魅力を競い合う、エキサイティングな時代の幕開けなのです。


「駅袋」からの脱却へ。変わりゆく池袋とアドアーズの閉店

さて、ここまでアドアーズ閉店の直接的な理由、思い出、そしてゲームセンター業界の現状について深く掘り下げてきました。

しかし、この物語を完全に理解するためには、視点をぐっと引き上げ、池袋という街全体が今まさに経験している、地殻変動とも言える巨大な変化に目を向ける必要があります。アドアーズの閉店は、この大きな文脈の中で起きた、一つの象徴的な出来事なのです。

池袋が抱える課題:「駅袋」とは何か?

都市計画や街づくりの専門家の間で、池袋は長年「駅袋(えきぶくろ)」と揶揄されてきました 。

これは、JR、東武、西武、東京メトロが乗り入れる巨大ターミナル駅であるにもかかわらず、駅を利用する多くの人々が駅ビルや駅周辺の商業施設で用事を済ませてしまい、街の奥へと足を踏み入れずに帰ってしまう現象を指す言葉です 。

駅が人を集める一方で、その活気が街全体に広がっていかない。駅が人を吸い込む「袋」のようになってしまっている、というわけです。  

この「駅袋」からの脱却は、豊島区や鉄道会社、デベロッパーにとって長年の悲願でした。そして今、そのための壮大なプロジェクトが、街の至る所で進行しています。

2043年まで続く、池袋大変革プロジェクト

現在、池袋では、2043年度の完成を目指す、息の長い大規模な再開発計画が進行中です 。特に駅の西口では、複数の街区に分けて高さ270m級の超高層ビルを含む3つの複合ビルが建設され、オフィス、商業施設、そして池袋エリア初となる外資系高級ホテルなどが誘致される予定です 。  

この再開発の目的は、単に新しいビルを建てることではありません。その根底には、池袋を「ウォーカブルなまち(歩いて楽しい街)」へと生まれ変わらせるという明確なビジョンがあります 。  

  • 歩行者中心の空間創出:駅前広場を再整備し、車道を一部歩行者専用道路化するなどして、人が快適に歩き回れる空間を広げます 。  
  • アート・カルチャー都市への進化:東京芸術劇場といった既存の文化施設との連携を強化し、新たにアート・カルチャー情報の発信拠点や人材育成施設を整備することで、街全体の文化的な魅力を高めます 。  
  • 回遊性の向上:駅の東西を結ぶ新たなデッキを整備するなど、人の流れをスムーズにし、街の隅々まで賑わいを波及させることを目指します 。  

要するに、池袋はこれまでの「若者とサブカルチャーの雑多な街」というイメージから、国内外の多様な人々を惹きつける、より洗練された「国際アート・カルチャー都市」へとアイデンティティを大きく転換しようとしているのです 。  

古き良き池袋の象徴、アドアーズの退場

この壮大な都市の再設計図の中に、アドアーズサンシャイン店の閉店を位置づけてみると、その意味はより一層深まります。

アドアーズが入居するMixalive TOKYOの再開発は、まさにこの池袋大変革のミニチュア版です。40年間親しまれてきたゲームセンターという、ある意味で20世紀的な、少し雑多で有機的なサブカルチャーの拠点が姿を消し、その跡地に、講談社という大資本がプロデュースする、より洗練され、企画性の高い「LIVEエンターテインメント」の「2nd Stage」が生まれようとしています 。  

これは偶然の一致ではありません。街全体が「アート・カルチャー」を旗印に、よりグローバルで高付加価値な方向へと舵を切る中で、その中心地であるサンシャイン60通りに位置する一等地が、同じ方向性の再開発の対象となるのは、必然的な流れと言えるでしょう。

アドアーズサンシャイン店の閉店は、単なる一つの商業施設の営業終了ではありません。それは、池袋という街が、そのアイデンティティを再定義する過程で起きている、新旧交代の波を象徴する出来事なのです。それは、街が成長し、進化するために避けられない変化の痛みなのかもしれません。古き良き時代の思い出が詰まった場所が、新しい未来のビジョンに場所を譲る。その切ない瞬間を、私たちは今、目の当たりにしているのです。


結論:ありがとう、アドアーズ。そして、これからの池袋へ

池袋のランドマーク「アドアーズサンシャイン店」の閉店。そのニュースから始まった私たちの旅は、予想以上に深く、広大な物語へと繋がっていました。

最初に、私たちは「諸般の事情」という言葉の裏に隠された、ビルオーナー講談社による「Mixalive TOKYO 2nd Stage」計画という明確な事実を発見しました。これは経営不振による閉店ではなく、より大きな都市開発の文脈の中で起きた、戦略的な立ち退きであったことがわかります。

次に、40年という時間の中でアドアーズが育んできた、クレーンゲームの興奮、格闘ゲームの熱狂、音楽ゲームの陶酔といった、かけがえのない思い出の価値を再確認しました。それは単なる娯楽施設ではなく、多くの人々の人生に寄り添った「サードプレイス」でした。

そして、ゲームセンター業界全体に目を向けると、「衰退」という単純な言葉では片付けられない、「選択と集中」によるビジネスモデルの進化というダイナミックな実態が見えてきました。業界は死んでいるのではなく、形を変えて生き残りを図っているのです。その証拠に、池袋にはGiGO、タイトーステーション、ラウンドワンといった強者たちが、それぞれの戦略でしのぎを削る、活気ある競争の場が今なお存在します。

最後に、この一つの閉店劇が、池袋という街そのものが「駅袋」という課題を克服し、「国際アート・カルチャー都市」へと生まれ変わろうとする、2043年まで続く壮大な再開発計画の縮図であることを突き止めました。アドアーズの閉店は、街が新しいアイデンティティを獲得する過程で生じる、避けられない新陳代謝の象徴だったのです。

40年間、池袋の街角で無数の喜びと興奮、そして出会いを生み出してくれたアドアーズサンシャイン店に、心からの感謝と敬意を表します。一つの時代が終わりを告げることへの寂しさは、決して消えることはないでしょう。

しかし、私たちは同時に、未来に目を向けることもできます。池袋のゲーセン戦国時代は、これからが本番です。そして、数十年後、私たちが知る池袋とは全く違う、新しい魅力に満ちた都市がその姿を現しているはずです。

ありがとう、アドアーズサンシャイン店。あなたの灯した遊びの火は、形を変え、新たな場所で、きっとこれからも燃え続けるでしょう。そして私たちは、変わりゆく池袋の物語を、これからも見届けていきたいと思います。

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