近年、ポケモンカードは数万円から数千万円という高値で取引され、「投資資産」のカテゴリーにまで昇格し、バブル状態を呈していました。しかし、現在その価格は下降トレンドに転じています。
ポケモンカード市場の変動ヒカキンの「5000万円リザードン」が半額に!専門家が解説
高値で取引される「レアカード」を入手すべく、転売ヤーがポケモンカードの買い占めをおこなう事態が増え、店頭からは品切れが続出。
「中学生以下にのみ販売」や「おひとり様〇パックまで」と制限がかけられるほどに。また、人気YouTuberがポケモンカードを動画で取り上げたことも、若い視聴者層からの人気を集めるきっかけとなった。
しかし、2022年にYouTuber・HIKAKINが1枚5000万円で購入したカードは、現在、買取価格は2500万円と、大幅に値下がりしている。
ファンも「ポケモンカードの時代は終わりを告げた」「さすがに価格が下がりすぎでは?」と、落胆の声を出し始めている。
ポケモンカード市場は、なぜ崩壊しつつあるのか、トレーディングカード専門家の後藤寛氏に話を聞いた。
「2016年に20周年を迎えたころから、ポケモンカードに『子供向けのゲーム』から『遊べる美術品』という認識が生まれ、投資用の資産として保有する方が増えました。
また、同年に発売されたスターターパックやセットの価格が、500円という手軽な価格だったことで、インフルエンサーが動画で紹介する機会が増えました。
それが最近になって、下落傾向にある理由は、以下のように考えられます。
まず『ボックス』の供給が需要に追いついたことです。ポケモンカードは5~10枚のカードが入った『パック』と、そのパックが10~30セット入った『ボックス』の単位で売られていますが、バブル以降、ポケモンカードのボックスはつねに品切れ状態でした。
そのため、ボックスは『手に入った時点で儲かる』状態となり、転売目的の買い占めが横行していました。
しかし、2023年の夏ごろから、メーカーがボックスの大量生産をおこない、購入しやすくなったことで、ボックスのプレミア化が落ち着き、市場が急速に正常化しました。
そして、ボックスが誰でも買えるようになったことで、フリマアプリや買い取市場に、大量のカードがあふれるようになりました。その結果、シングルカードの価格も全体的に下落しています。
さらに、『投資家離れ』も原因です。上記の要因によってカードの高騰が期待できなくなり、投資目的の人が離れたことで、高額カードが売れなくなりました。
購入者が減ったことで、値下げしても売れなくなり、現在の下落につながったと考えられます」ただし後藤氏は、ポケモンカードのバブル崩壊を不安視していないという。
「ボックスの供給より需要が増えることは今後、ほぼなくなり、投資熱はさらに冷めると思われます。ただ、これはバブルが終わっただけで、ポケモンカードの人気は依然として高いままです。
それどころか、バブルによってポケモンカードの知名度とともにプレイヤーも増し、さらにYouTuberが動画で取り扱ってくれたことで、その動画を見たお子さんと、その親御さんが購入されることが増えました。
つまり、市場の裾野はバブル前より拡大しているのです。バブル崩壊というより、正常に戻ったと言ったほうがいでしょう。
これから数年は、価格も落ち着くと思いますが、30周年など大きな節目が起これば、再び高騰すると予想します。
また、大会での賞品やイベント限定品などは、変わらずプレミアがつく可能性が高く、そちらを狙う投資家は今後も残ると思います」
本当のファンだけが楽しめる市場に落ち着いてほしいものだ。
エコノミスト/経済評論家の門倉貴さんの見解
株式であれば企業の業績、不動産であれば将来生み出す収益というように確かな価値の裏付けが存在するが、ポケモンカードにはそのような価値の裏付けとなるものが存在しない。 ポケモンカードの価値は単純に需要と供給のバランスだけで決まっている。 これまでは需要に対して供給が圧倒的に不足していたので、ポケモンカードの希少性が高まり、それを反映して価格が急騰していたが、相次ぐ増産により供給が増えて需要とのバランスが調整されるようになれば、それに伴って価格が下がるのは当然の流れだろう。 ただ、ポケモンカードの価格が下がることで損失を被るのはもっぱら投資目的・転売目的で購入していた人たちに限られる。子供を中心にポケカに思い入れがあって欲しくても価格が高すぎて手に入らなかった人たちにカードが行き渡るようになるという点でポケカのバブル崩壊は望ましい事象ではないか。
門倉貴史(@takashikadokura) • Instagram写真と動画